【アガルート社労士講座|労働基準法】実務に役立つ基礎知識コラム【フレックスタイム制(中途退職者の取り扱い)】
前回フレックスタイム制について解説しました。
その続きで、フレックスタイム制の運用における中途採用者又は中途退職者の取り扱いについて解説します。
「ヤムチャ総務課長ブログ」では、現役の社労士が実務でも役立つ知識を解説しています。
初学者の方を対象に解説していますので、これから社労士を目指そうとしている方は、ぜひご覧ください。
フレックスタイム制の場合、中途退職者と中途採用者はどう扱えばいい?
フレックスタイム制は、始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねることで、子育てや介護などの家庭と仕事の両立を図る目的で、作られました。
それにより、3ヶ月以内の清算期間内で、ある程度自分のペースで仕事の時間配分ができるため、心身の健康にもつながると期待されています。
「原則のフレックスタイム制の運用方法がイマイチわからない」という方は、まずこちらの「【アガルート社労士講座|労働基準法】実務に役立つ基礎知識コラム【フレックスタイム制】」をどうぞ!

フレックスタイム制は、清算期間の上限が3ヶ月以内とされており、その期間で1週間の労働時間の平均が40時間以内であれば割増賃金は発生しません。
ただ、中途退職者等の清算期間が短い労働者の場合、雇用されている期間が繁忙期と重なり、働いている期間だけで見ると、週平均40時間を超えるということもあり得ます。
ではそのような場合でも、使用者は清算期間中の週平均を40時間以内に設定しているため、通常の労働者と同じように、割増賃金を支払う必要はないのでしょうか。
労基法第32条の3の2では、次のように規定されています。
第三十二条の三の二 使用者が、清算期間が一箇月を超えるものであるときの当該清算期間中の前条第一項の規定により労働させた期間が当該清算期間より短い労働者について、当該労働させた期間を平均し一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間(第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働については、第三十七条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない。
結論から言うと、使用者は中途退職者等に対し、労働させた期間を平均し1週間当たり40時間超えて労働させたのであれば、その超えた時間分の割増賃金を支払わなければなりません。
実際は次のように計算します。
こちらの「法定労働時間の総枠」を超えた時間分の割増賃金の支払いが必要となります。
詳しくは、次の具体例で解説しましょう。
具体例
①月(暦日数) | ②法定労働時間の総枠 | ③実労働日数 | ④1週間平均労働時間(③÷(①/7)) |
---|---|---|---|
4月(30日) | 171.4時間 | 175時間 | 40.8時間 |
5月(31日) | 177.1時間 | 150時間 | 33.9時間 |
6月(30日) | 171.4時間 | 185時間 | 43.2時間 |
合計 | 520時間 | 510時間 | – |
通常の労働者であれば、4~6月の清算期間内の総枠が520時間に対し、実労働時間が510時間のため、割増賃金は不要となります。
ただ、6月1日に入社した労働者に関しては、6月の「法定労働時間の総枠」を超えた時間分の割増賃金の支払いが必要です。
中途退職者の残業時間の計算を誤ると、思わぬトラブルに発展しかねないため、今回解説した計算方法はしっかり押さえておきましょう。
詳細な内容は、「アガルート社労士講座」の各種カリキュラムで学ぶことができます。
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