社労士試験の受験資格【高卒でも社労士になるための条件とは?】
- 社労士試験って誰でも受験できるのかな?
- 社労士試験の特徴は?
- 受験者はどんな人が多いの?合格者の共通点は?
こういった悩みに答えます。
本記事の内容
- まず確認!社労士試験の受験資格
- 社労士試験ってどんな試験?科目合格もある?
- 口コミと公式データから探る合格者の特徴・共通点
社労士試験は、一定の条件を満たした者でないと、受験できない国家試験です。
受験資格の条件は、厳しいものではありませんが、解説なしで理解するのは、少し難しい部分があります。
本記事では、初受験者の方向けに、現役の社労士である著者が、社労士試験の受験資格について詳しく解説します。
理解できないまま受験勉強を始めると、受験申込みの際、「受験資格を満たしてない!」なんてことにもなり兼ねません。
そうなったら、これまで勉強してきたことが、水の泡になってしまいます。
受験を検討されている方は、まず受験資格があるのかを確認してから、受験勉強を始めるようにしましょう。
まず確認!社労士試験の受験資格
社労士試験は、誰しも受験できるわけではなく、3つに分類される要件のいずれかを満たす必要があります。
社労士試験の要件の種別
- 学歴要件
- 実務経験要件
- 試験合格要件
それぞれの要件の詳細を見ていきましょう。
学歴要件
わかりやすいように、学歴要件を更に3つに細分化しました。
次の1~3のいずれかを満たすことで、社労士試験を受験することができます。
1.学校教育法による学校を卒業した者
次の学校を卒業した方は、受験資格があります。
- 大学
- 短期大学
- 専門職大学
- 専門職短期大学
- 高等専門学校(5年)
2.課程の修了または単位の修得
次の者は学校在籍中であっても、社労士試験を受験することが可能です。
- 専門職大学の前期課程を修了した者
- 大学で一般教養科目36単位以上、かつ専門教育科目等の単位を加えて、48単位以上の卒業要件科目を修得した者
3.上記の要件を満たさない主な学歴要件
(1)厚生労働大臣が認めた学校等を卒業し又は所定の課程を修了した者
職業能力開発総合大学校の特定専門課程や高等学校又は特別支援学校の専攻科、幼稚園教諭養成機関、小学校教員養成機関などがあります。
その他の機関については、こちらを参照ください。
(2)専修学校の専門課程を修了した者
平成7年以降に卒業した者
- 「専門士」「高度専門士」の称号が付与されていること。
平成6年以前に卒業した者
次の3つの条件を満たした学校を卒業していること。
- 修業年限「2年以上」
- 課程の修了に必要な総授業時間数「1700時間(62 単位)以上」
- 専修学校の「専門課程」を修了
平成7年以降に卒業した方は、上記の条件を満たす学校でないと「専門士」「高度専門士」の称号が付与されないため、こちらの要件を気にする必要はありません。
詳しい要件はこちらを参照ください。
(3)短期大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者
全国社会保険労務士会連合会における、個別の受験資格審査を通過した学校や外国の大学の卒業生等が該当します。
以上が学歴要件の解説になります。
「学歴要件」だけを見ると、高卒だと受験資格を満たしていないことになります。
ただ、高卒の方でも、次の「実務経験要件」もしくは「試験合格要件」を満たすことで、社労士の受験資格を満たすことができます。
まず「実務経験要件」から見ていきましょう。
実務経験要件
次のような法人や団体で、社労士業に従事した経験が3年以上ある場合は、受験資格を満たすことになります。
該当する主な法人や団体
- 健康保険組合などの労働社会保険諸法令の規定に基づいて設立された法人の役員または従業員
- 国家公務員や市役所などの地方公務員、民営化前の日本郵政公社の役員又は従業員
- 協会けんぽや年金機構の役員又は職員(社会保険庁の行政事務に従事した経験も含む)
- 社労士もしくは弁護士又はその法人で、業務の補助を行っていた従業員(税理士は不可)
- 専従の労働組合の役員
- 会社又はその他の法人で、労務管理に携わった役員
- 一般企業の総務部などで、労働社会保険諸法令に関する事務に従事した従業員など
実務経験要件の場合は、「3年以上の実務経験」と「法人や団体から証明書」が必要になることを覚えてきましょう。
試験合格要件
次のような試験に合格した経験のある方は、受験資格を得ることができます。
国家試験の合格者
該当する国家資格
- 司法試験予備試験、旧法の規程による司法試験の第一次試験などに合格した者
- 行政書士試験に合格した者
- 税理士、弁理士、司法書士試験などの国家試験のうち、厚生労働大臣が認めた国家試験に合格した者
その他の厚生労働大臣が認めた国家試験は、こちらを参照してください。
高卒で受験資格を得る方法
行政書士試験は、年齢・性別・学歴・国籍に関係なく、誰でも受験することが可能です。
そのため、高卒の方が社労士試験を受験する場合、次のどちらかの方法を取ることが一般的と言えるでしょう。
高卒の方が受験資格を得る方法
- 一般企業の総務部などで、社保手続き等の業務に3年以上従事する
- 行政書士試験に合格する
社労士の方でも、行政書士の資格をお持ちの方が大勢いますので、行政書士合格後、社労士を目指す路線をおすすめします。
この他にも、過去に社労士試験を受験した方も受験資格を得ることができます。
社労士試験の受験経験者
過去に受験したことがある者
- 直近3年間の社労士試験の受験票又は成績表を所持している者
- 社労士試験の一部免除決定通知書を所持している者
その他詳しい資格要件について、社労士試験のオフィシャルサイトを参照してください。
以上の解説で、自分に受験資格があるか確認できたでしょうか。
確認できた方は、受験勉強を始める前に、社労士試験がどんな試験か頭に入れておきましょう。
社労士試験ってどんな試験?科目合格もあるのか?
社労士は、労働社会保険諸法令に精通する労務管理の専門家です。
労働法の軸となる「労働基準法」を始め、「労災保険法」や「健康保険法」など、社労士業を行うには、多くの法律の知識が必要となります。
そのため、社労士試験では数多くの法律が出題されます。
では、社労士試験の概要を確認していきましょう。
社労士試験の概要
受験科目 |
|
試験日 |
|
出題形式(配点) |
|
合格条件 |
※合格には全体の7割ほど必要 |
受験手数料 | 15,000円(令和3年度試験より改定) |
科目合格の有無 | 無 |
受験者数と合格率(令和2年度試験) |
|
以上の情報から社労士試験の特徴をまとめると、次のようになります。
社労士試験の特徴まとめ
- 過去10年の合格率は、1桁台と非常に低い
- 試験科目が多いわりに、科目合格がない
- 年に1回しかない
- 1科目の配点が少ない
- 各科目で合格基準が定められているため、苦手科目を作れない
- 試験科目は、法改正が頻繁に行われる法律である
社労士試験の一番の特徴は、「苦手科目が作れない」という点です。
配点が選択式8科目(各5点)、択一式7科目(各10点)で、科目ごとに最低点が定められています。
これが合格率が毎年1桁台と低い理由の一つでしょう。
全科目で最低点を切らないようするには、各科目満遍なく勉強する必要があるため、合格に必要な勉強時間は、800~1000時間と言われています。
そのため合格には、「勉強方法の確立」「学習計画の作成」が必須になってきます。
初めて資格の勉強をされる方は、こちらの「社労士試験に必要な勉強時間とは?【時短できる良質な勉強法】」を参考にどうぞ!
また、科目合格がない社労士試験ですが、実務経験等によって、一部の科目の免除を受けることができます。
科目免除の条件
労働社会保険諸法令の事務等に従事したことがある方は、一定の要件を満たすことで、試験科目の一部の免除を受けることができます。
「一般企業で働きながら、社労士を目指す!」という方は、読み飛ばして結構です。
主な免除資格は、次のとおりです。
《主な資格》
1.国又は地方公共団体の公務員として労働社会保険法令に関する施行事務に従事した期間が通算して10年以上になる方
2.厚生労働大臣が指定する団体の役員若しくは従業者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上になる方又は社会保険労務士若しくは社会保険労務士法人の補助者として労働社会保険法令事務に従事した期間が通算して15年以上になる方で、全国社会保険労務士会連合会が行う免除指定講習を修了した方
3.日本年金機構の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間(日本年金機構の設立当時の役員又は職員として採用された方にあっては、社会保険庁の職員として社会保険諸法令の施行事務に従事した期間を含む。)が通算して15年以上になる方
4.全国健康保険協会の役員又は従業者として社会保険諸法令の実施事務に従事した期間(全国健康保険協会設立当時の役員又は職員として採用された方にあっては、社会保険庁の職員として社会保険諸法令の施行事務に従事した期間を含む。)が通算して15年以上になる方
科目免除の特別措置があるとは言え、どれも10年以上の実務経験が必要なため、ハードルは結構高めです。
各科目ごとの免除要件が定められているので、下記の表で科目ごとの一例をご確認ください。
免除科目 | 免除資格者の一例 |
---|---|
労基法/安衛法 |
|
労災法 |
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雇保法 |
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徴収法 |
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健保法 |
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厚年法 |
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国年法 |
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労一/社一 |
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《参考元》社会保険労務士試験オフィシャルサイト:試験科目の一部免除資格者一覧【pdf】
国家公務員として、関連法令の業務に従事した経験がある方は、免除資格者になる可能性があります。
国家公務員の方は、社労士試験のオフィシャルサイトでご確認ください。
社労士試験や社労士の仕事内容、将来性について、勉強前にもっと知っておきたい方は、こちらの「【社労士の資格を目指す初学者へ】受験勉強前に読むべき社労士の取説」をどうぞ!
社労士試験は、実務未経験で受験する方の割合が高いのも特徴です。
そのためほとんどの方が、免除を受けずに全科目勉強することになります。
その中で合格する方の特徴や共通点について、深堀していきたいと思います。
口コミと公式データを検証【合格者の特徴・共通点とは?】
受験者数と合格者数の推移
まず過去10年間の受験者数と合格者数の推移について見ていきましょう。
試験年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和2年度 | 34,845人 | 2,237人 | 6.4% |
令和元年度 | 38,428人 | 2,525人 | 6.6% |
平成30年度 | 38,427人 | 2,413人 | 6.3% |
平成29年度 | 38,685人 | 2,613人 | 6.8% |
平成28年度 | 39,972人 | 1,770人 | 4.4% |
平成27年度 | 40,712人 | 1,051人 | 2.6% |
平成26年度 | 44,546人 | 4,156人 | 9.3% |
平成25年度 | 49,292人 | 2,666人 | 5.4% |
平成24年度 | 51,960人 | 3,650人 | 7.0% |
平成23年度 | 53,392人 | 3,855人 | 7.2% |
《参考元》社会保険労務士試験オフィシャルサイト:第52回(令和2年度)社会保険労務士試験についての情報
平成28年以前は、合格率にもバラつきがあり、平成27年には過去最低で2.6%まで落ち込みました。
ただ、直近4年間は6%台を推移しており、今後の合格率も6%台を維持することが予想されます。
6%台と聞いて、かなり低いと思われがちですが、決してそんなことはありません。
その理由は、社労士試験の受験生には、次のような特徴があるからです。
社労士試験の受験生の特徴
- ほとんどの方が仕事と両立して勉強している
- 無勉で受験する方が多い
仕事と勉強の両立で、勉強不足の方が大勢受験するという傾向があります。
次の表は、令和2年度試験の合格者の職業別割合です。
合格者の職業別割合
職業 | 割合 |
---|---|
会社員 | 58.4% |
公務員 | 8.1% |
自営業 | 4.8% |
団体職員 | 4.0% |
役員 | 3.0% |
無職 | 13.2% |
学生 | 1.0% |
その他 | 7.5% |
仕事と受験の両立者 | 78.3% |
《参考元》社会保険労務士試験オフィシャルサイト:第52回(令和2年度)社会保険労務士試験についての情報
こちらの表から、約8割の方が、仕事と両立していることがわかるかと思います。
社労士試験は、司法試験などの受験に専念する方が多い難関の国家資格と比べ、合格できる実力まで達して受験に臨む方が、極めて少ない試験です。
つまり、本試験までしっかり勉強を継続できれば、初学者の方でも一発で十分合格が可能です。
では、合格できる方には、どういった共通点があるのでしょうか。
勉強方法や学習時間など、実際に合格した30人から共通点を探りました。
合格者30人の共通点を徹底調査
社労士試験に合格した30人の声から、「勉強方法」や「モチベーションの保ち方」など、合格に直結する共通点を探してみました。
まず共通している勉強方法を見ていきましょう。
勉強方法編
- わからないなところは飛ばして、基礎や頻出論点ををしっかり押さえる。
- 重要度を最優先して、メリハリを付けた学習をする。
- 過去問を何周もしている(最低3周、多い人は10周以上)。
- 解けなかった問題はそのままにしない。今理解できなくても付箋を貼って必ず戻ってくる。
- アウトプット中心の傾向にある。
社労士試験は、過去に出題された論点が繰り返し出題される傾向があります。
また出題内容も、基礎的な知識がほとんどなので、まず基礎を固めて、頻出論点を中心に学習することが重要です。
今回は、フォーサイトの合格者インタビューを検証しました。
合格経験者の勉強方法などを参考にした方が、合格へは近道です。
聞き流す程度でいいので、時間があるときにどうぞ!
続いては、どれぐらいの勉強時間を要したかなどを見ていきましょう。
学習時間編
- 平日は2~3時間、休日は5~8時間ぐらいの人が多い。
- トータルの勉強時間は、平均700~1000時間。最短で500時間ぐらいの人もいる。
- 学習開始のタイミングは、1年前が多い。最短5か月の人もいる。
- 隙間時間を活用して勉強時間を確保している。朝早く起きたり、通勤時間、昼休み、営業の移動時間中など。
- 最初は無理せず、学習のペースを徐々に上げていく。
- 直前期は、本番を意識した学習をしている。短い時間で問題を解いたり、70問まとめて問題を解く練習など。
平日は2.3時間で、休日にはまとめて5時間以上勉強している方が多いようです。
ただ、最初は無理をせず、徐々に学習時間を伸ばすことをおすすめします。
そのためには、学習期間が10~12ヶ月ほどほしいところです。
学習開始のタイミングは、早いに越したことはありません。
また、受験勉強を継続したり、本試験でいい結果を出すには、精神的な部分が重要になってきます。
どういった気持ちで、受験勉強に臨むべきなのか見ていきましょう。
精神面編
- 年金科目に苦手意識を持つ人が多いので、国年と厚年の微妙な違いを意識して学習する。
- 5,6月は一番勉強がイヤになる時期。合格後のことを考えて、モチベーションを保つ。
- 合格した人でも、本番2,3か月前の模試で合格基準に達しない人は多い。
- 本当に実力が付くのは直前期、最後まであきらめない人が合格している。
一番のポイントは、本試験の最後まで諦めないということです。
実力が付くのは、本試験の直前期です。(特に初受験者)
ちなみに著者も、合格した年の6・7月の模試どちらもD判定でした。
今年必ず合格するという強い気持ちで、勉強も本番も臨んでください。
社労士試験に一発で合格した方もいれば、5度目の受験で合格した方など様々です。
今回検証で、最終的には試行錯誤しながら、同じような勉強方法や思考にたどり着いていることがわかりました。
成功体験だけでなく、失敗体験も参考になりますよ。
失敗した方が経験値は溜まりますからね。
こちらの「【フォーサイト失敗談】社労士に不合格となった理由は?評判や価格、合格率を徹底分析!」は、私の受験当時の失敗談なので、よろしければ参考にどうぞ!
社労士試験の受験資格の要件は、非常に幅広いです。
それはなるべく多くの方に、チャンスが訪れるようになっているためです。
現に、令和2年度試験の合格者の最年少は20歳、最年長は78歳です。
女性の合格者の割合も3割以上という高い数字です。
みなさんも「自分には無理だ!」と初めからあきらめずに、ぜひ挑戦してみてください。
あきらめない人にだけ、合格は訪れるのです。
本記事のまとめ【社労士試験に向いている方】
- 基本に忠実な方
- 毎日コツコツ継続できる方
- 諦めが悪い方
- 素直に人のアドバイスを聞ける方
- すぐ行動に移せる方